A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(えーぐんようけつせいれんさきゅうきんいんとうえん)。
毎年ではないですが、流行していると新聞に出ることがあります。
なんだかすごく長くて難しい名前で、怖い病気な感じがするのですが、
新聞の記事を読んでも、それほど怖い病気には思えません。
実際、どんな病気なんでしょう。
気になったので、調べてみました。
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、A群β溶血性レンサ球菌咽頭炎とも呼ばれる、
感染症です。
この病気は、温帯地域ではよくある病気です。
亜熱帯地域でもみられますが、熱帯地域では滅多にみられません。
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、小児がかかりやすいです。
早ければ、0歳児でもかかることがあります。
患者数は、1歳から徐々に増え、5歳がピークで、
それ以降は徐々に減り、15歳以上ではかなり減ります。
少ないですが、成人でもかかることがあります。
季節的なピークは、冬と春から初夏にかけての、年2回あり、
家庭、学校といった集団での感染も多くあります。
A群溶血性レンサ球菌が原因
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の原因は、
「A群溶血性レンサ球菌」という細菌です。
レンサは「連鎖」のことで、顕微鏡で見ると鎖のようにつながって見えるので、
こう呼ぶそうです。
なぜカタカナなのかは、わかりませんでしたけど。
この細菌は、もともと「A群β溶血性レンサ球菌」という名前です。
A群というのは、ランスフィールド(Lancefield)分類法という、
β溶血性レンサ球菌の分類(A群~V群まで)の1つなので、
βを省略して、A群溶血性レンサ球菌とも呼ばれています。
英語は、「Group A streptococcus」で、「GAS」と略されたりします。
また、「化膿レンサ球菌(かのうれんさきゅうきん、Streptococcus pyogenes)」
と呼ばれたり、
単に「溶連菌(ようれんきん)」と呼ばれたりします。
細菌の名前の中に、β溶血性とありますが、
溶血というのは、血液中の赤血球が破壊される現象のことです。
で、細菌の溶血性というと、その細菌が溶血を起こすのかどうか、
また、溶血を起こした場合、どんな状態になるのかによって、
α、β、γの3つの型に分類されます。
β溶血性の細菌を血液寒天培養すると、周辺の赤血球のほとんどを破壊するので、
顕微鏡で見ると周りが透明になります。
A群溶血性レンサ球菌は、グラム陽性菌でもあります。
グラム陽性というのは、グラム染色法による分類で、細菌を色素で染色して区別します。
グラム染色法とは、光学顕微鏡で見ると、区別のつきにくい細菌に、
色をつけて観察しやすくするためのものです。
陽性の細菌は紫色に、陰性の細菌は赤色になります。
条件によって、陽性になったり、陰性になったりする不定性というのもあります。
A群溶血性レンサ球菌は、咽頭炎のほかに
膿痂疹(のうかしん)、猩紅熱(しょうこうねつ)、中耳炎(ちゅうじえん)、
蜂窩織炎(ほうかしきえん、または蜂巣織炎(ほうそうしきえん))、
肺炎、化膿性関節炎(かのうせいかんせつえん)、骨髄炎(こつずいえん)、
髄膜炎(ずいまくえん)、壊死性筋膜炎(えしせいきんまくえん)、
毒素性ショック症候群(どくそせいしょっくしょうこうぐん)なども起こします。
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の症状
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の潜伏期間は2~5日で、
潜伏期での感染性はわかっていません。
発症したときの症状としては、突然の38度以上の発熱、咽頭痛(いんとうつう、
のどの痛み)があります。
他に、嘔吐、全身の倦怠感、腹痛、筋肉痛、頭痛などを伴うこともあります。
まれに重症化して、猩紅熱(しょうこうねつ)となることがあります。
その場合、発熱が始まってから12~24時間すると、
全身に小さな赤い斑点や日焼けのような発疹が出たり、
3日、4日すると、舌に赤いぶつぶつがでる「苺舌(いちごした)」になったりします。
重症といっても、猩紅熱は抗生物質がよく効くので、昔ほど怖い病気ではなく、
溶連菌感染症(ようれんきんかんせんしょう)として、治療は行われます。
合併症としては、化膿性疾患の肺炎、髄膜炎、敗血症(はいけつしょう)など、
非化膿性疾患のリウマチ熱、急性糸球体腎炎(きゅうせいしきゅうたいじんえん)
などがあります。
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の治療法
治療には、ペニシリン系の抗生物質(抗菌剤、抗菌薬)が使われます。
アレルギーのある場合には、エリスロマイシンや第1世代のセファムも使用されます。
薬を飲み始めて、24時間経過すると、感染の可能性はほとんどなくなります。
これらで症状が良くならない場合には、クリンダマイシン、
クラブラン酸・アモキシシリン、第2世代以降のセファムなどを使用します。
咽頭炎自体は、治療しなくても、たいてい数日で良くなるんですが、
合併症の予防のために、抗生剤による治療を行います。
抗生剤による治療の目的は、咽頭炎の治療というより、
合併症になるリスクを減らすためとも言えます。
合併症予防のためには、抗生物質を少なくとも10日は飲み続けなければいけません。
症状が良くなったからと、薬をやめると合併症になる可能性が高くなります。
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の感染経路
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の感染経路には、せきやくしゃみなどによる飛沫感染、
菌が手などについて感染する、といったものがあります。
予防としては、患者との濃厚接触を避けること、うがい、手洗いの励行などがあります。
一般に市販されている消毒剤も有効です。
兄弟間の感染率が最も高く、次いで親子の感染率が高いというデータもあるので、
一人がかかったら、症状はなくても、他の家族も一緒に検査を受けた方が良いでしょう。
また、家庭内感染を防ぐために、家庭内でのタオルの共用は、しないようにしましょう。
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、再度かかったりします。
インフルエンザのように1回かかれば、しばらくかからないということはありませんので、
治ったからといっても安心せず、予防のために、うがい、手洗いを励行してください。
また、症状が出たら、早めに治療を受け、合併症を予防しましょう。