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マグネシウム電池とは

マグネシウム電池とは、

マグネシウム空気電池やマグネシウム燃料電池

のことを言います。


マグネシウム空気電池

空気電池というのは、

正極(プラス極)に空気中の酸素を、

負極(マイナス極)に金属を用い、

それらの電気化学反応によって、電気を発生させる電池です。

その負極の金属にマグネシウムを使ったものが、マグネシウム空気電池です。


マグネシウム燃料電池

燃料電池も、空気電池と同様に、

正極に、空気中の酸素を使いますが、

負極には、燃料のように補充できるものを使います。


現在、自動車とかに使用されている燃料電池であれば、

負極に水素を使っていますが、

マグネシウム燃料電池は、

無くなったら何らかの方法で補給できるようにして、

マグネシウムを負極に使っています。


マグネシウム電池内の化学反応

空気電池、燃料電池、どちらにしろマグネシウム電池は、

電解液には塩水が使われています。

正極の素材には、カーボン繊維などの空気を通すポーラス構造で、

電気を通すものが使われています。


マグネシウム電池内での、化学反応は次のようになります。

正極:O2+2H2O+4e→4(OH)

負極:2Mg →2Mg2++4e

全反応:2Mg+O2+2H2O→2Mg(OH)2


マグネシウム電池のメリット

なぜマグネシウムを電池に使うのでしょうか?


マグネシウムは、地球上で8番目に多い元素で、

携帯電話に使われているリチウムと違って、

レアメタルではありませんから、

供給不足などの問題が、発生することはありません。


それと、体に必要なミネラルでもあるので、人体に無害だからです。


マグネシウム電池の理論容量は、

リチウムイオン電池など、現存する電池の容量より高いです。

リチウムイオン電池は、リチウムの欠点から、

容量をそれほど増やせないと考えられています。


リチウムの欠点とは、水と反応して燃えることです。

そのため、電解液に水は使えませんし、

空気電池のように、正極に空気中の酸素も使えません。


空気中には、水蒸気が含まれているからです。

そうなると、負極のリチウムの能力がいくら良くても、

正極の物質の能力で、電池の性能が制限を受けるからです。


マグネシウム電池のデメリット

ただ、マグネシウム電池に何の問題もないのかというと、

そんなことはありません。


電池内の化学反応からできる、

水酸化マグネシウムをどうするかという問題

があります。


その問題とは、化学反応によりできた水酸化マグネシウムが、

皮膜となって負極のマグネシウムの表面を覆ってしまい、

内部のマグネシウムが反応できなくなり、

化学反応がすぐに終わってしまうことです。


これでは、電池としては使えません。


解決策

この問題、現在はいくつかの解決策が見つかっています。


難燃性マグネシウム

その1つが、東北大学の小濱教授の発見した、

難燃性マグネシウムを使う方法です。


小濱教授は、エアロトレインの研究をしています。

エアロトレインとは、地面から10㎝ほどの超低空を飛ぶ列車のことです。


太陽光や風力によって発電し、その電気でプロペラを回して、

高速移動できるよう研究が進められています。

高速移動させるためには、エアロトレインの機体は軽くする必要があり、

その材料として、燃焼を抑制するためにカルシウムを混ぜた

難燃性マグネシウムが使用されました。


エネルギー問題について日ごろから考えていた小濱教授は、

機体を作って余った難燃性マグネシウムを使って、

マグネシウム電池を作ってモータを回してみたところ、

3週間も回り続けました


このことから、難燃性マグネシウムが、

マグネシウム電池の負極に使えるということがわかりました。

それから、産業技術総合研究所、古河電池、日本素材との共同開発が始まり、

さらなる性能向上に向けた研究が進められています。


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フィルム状のマグネシウム

東工大の矢部教授は、別な方法を考え出しました。

その方法とは、藤倉ゴムと共同開発したフィルム状のマグネシウムを、

円筒状に巻いて、 少しずつ送り出して酸素と反応させるというものです。


それは、ビデオテープをイメージさせる形をしていて、

万が一、発火しても切れて燃え続けることはないそうです。


このフィルム型マグネシウム電池や、

1ヶ月充電不要の携帯電話用マグネシウム電池などの、

実用化に向けた研究が進められています。


マグネシウム二次電池

京大の内本教授らは、高輝度光科学研究センターと共同で、

マグネシウム二次電池を開発しました。


その研究内容は、2014年7月11日、

サイエンティフィック・リポーツに発表されました。

二次電池というのは、

携帯電話などに使用されている、リチウムイオン電池のように、

電池が切れても充電することで、繰り返し使用することができる電池のことです。


二次があれば、一次もあるわけですが、

一次電池というのは、乾電池のように充電できない電池のことです。


マグネシウム二次電池を実現するためには、

電解液と正極を新開発する必要がありました。

そこで開発されたのが、ポリアニオン化合物正極とグライム系電解質です。


できあがったマグネシウム二次電池は、

1kgあたりの容量約250Wh、10サイクル後の維持率90%をを実現

しました。


リチウムイオン電池の約200Whを超え、材料費は約1割に抑えられています。


ただ、一度に流せる電流が少ないので、

EV(電気自動車)に使うには能力が足らず、

さらなる改良が進められています。


市販されているマグネシウム一次電池

マグネシウム一次電池においては、2014年12月に発売されたものがあります。


それは、古河電池が凸版印刷と共同開発した、

「非常用マグネシウム空気電池 マグボックス(MgBOX)」です。


マグボックスは、凸版印刷が開発・製造した紙製の容器の4つの注水口それぞれに、

500mlのペットボトルで1回分の量(合計2リットル)を注水すれば発電をします。


注水する水は、淡水、海水のどちらでもよく、

飲み水として使えない雨水、河川や池の水なども使えます

ただし、界面活性剤やアルコールの入った水は使えません。


マグボックスの最大電気量は、300Whです。

2個のUSB端子のついたUSBボックスを、ケーブルに接続することで、

スマートフォンを最大30回充電できます。


USBボックスに付いているリセットスイッチを、

オンオフすることで最大5日間、電池はもちます。


重さは注水前で1.6kgで、外箱には6個重ねておけるだけの強度があります。

また、注水しなければ、長期間保存可能で、

使用後はUSBボックスとケーブルを外せば、

燃えるゴミとして扱える安全な材質でできています。


マグネシウム一次電池のリサイクル

マグネシウム一次電池については、リサイクルが考えられています。


いくらマグネシウムが地球上に大量にあるとはいえ、

消費するだけということになると、環境への負荷が大きくなるからです。


ただし、化学反応によってできる水酸化マグネシウムを、

マグネシウムに戻すのは簡単ではありません。


水酸化マグネシウムは、水がなくなったり、

加熱したりすれば酸化マグネシウムになります。

その酸化マグネシウムを、還元してマグネシウムを作るには、

触媒とともに真空中で約2200℃で加熱する必要があります。


現行はピジョン法

現在おもに行われている熱還元法は、ピジョン法というものです。


ピジョン法は、焼成ドロマイトとケイ素鉄(触媒)を、真空中で高温に加熱し、

ケイ素の還元作用でできたマグネシウムの蒸気を、冷却部で凝結させる方法です。


ピジョン法の問題点は、マグネシウム1t作るのに、石炭を11tも使うことです。

これなら、マグネシウムでなく石炭で発電した方が効率がよいですし、

触媒に使ったケイ素は回収できません。


また、石炭を燃やすことで、温暖化ガスであるCO2を排出するという問題もあります。


開発中の方法

このような問題を解決すべく、考えられている方法があります。


太陽炉を使う方法

その1つの方法が、東北大の小濱教授の考えられた、太陽炉を使う方法です。


太陽炉とは、レンズや反射鏡を使って、太陽光を集め、

高温を発生させる装置です。


2011年には、戦艦大和の部品を使った太陽炉の発生した熱を使った、

ピジョン法や炭素熱還元法によって、酸化マグネシウムを還元して、

マグネシウムを作ることに成功しています。


現在は、小濱教授とニコンが共同で、

さらに高性能な太陽炉の、開発が進めてられています。


太陽光励起レーザーを使う方法

他には、東工大の矢部教授が、

太陽光励起レーザーを使った方法を、考えられています。


矢部教授は、触媒なしの還元を目指しています。

それには、4000℃の高温を維持する必要があります。


ですが、ただ4000℃の熱を発生させればよいのではなく、

還元で起こる蒸発や分解に必要なエネルギーも考慮に入れなければなりません。

そのエネルギーを温度に換算すると、約2万度になります。


それは、太陽光をレーザーに変えることで、実現できるということのようです。

レーザーであれば、局部的に加熱することができ、

容器全体を暖める必要はありません。


また、レーザーエネルギーのほとんどは、

蒸発の潜熱として、蒸気に持ち去られるので、

炉壁が超高温になることもありません。


実際に、1kW級の炭酸ガスレーザーで還元実験が行われていて、

70%の純度でマグネシウムを生産できています。

現在は、太陽光励起レーザーの出力を、上げるための開発が進められています。

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